こまどりロビン教育科

中学・高校の教育関係を中心に、実感と事例を挙げながら書いていきます

新生した女子校の陰に

三田国際学園という学校の教育内容を、研修などで見ることがある。

都内に縁がある人なら「どこそれ?三田高校じゃないの?」となるだろう。

正体は「戸板女子高校」だ。共学化を含む組織改革の一環として2015年に名前を変えたのだ。教育内容も革新し、次代を担う私学としてのブランディングをするために改称する。
こういうパターンはよくある。ほかにも広尾学園と改称した「順心女子学園」、渋谷教育学園渋谷にと改称した「渋谷女子」がなんかが有名だ。

2000年ごろ、少子化の影響を真っ先に喰らったのが都内の女子校で、一部の上位校をのぞき、生徒を格段に減らすことになった。どこの学校も定員に満たず、空き教室ができたという。

このとき、危機感を持った学校が大ナタを振るって組織改革した。

一見外部から見るときらきらして輝かしく思えるが、内部では結構なリストラがあったというウワサ話も聞く。まあ当然だと思うが……。

最近はICT機器の導入なんか当然になっているから、業者なんかが「先進モデル校」として紹介したりしてくるので、「こういう学校を目指せばいいのか……」と安易に思わされがちな教員もいるのではないかと思う。

しかし、その陰にはナタで切り落とされたあれこれが存在し、それがあったからこそ、強いブランディングや、教育の集中化の実現があったのだあろうこともよく意識しておくべきではないだろうか。

教育業界のリベラルとグローバルはどこへ行く

トランプが大統領に選ばれたことは、反グローバル・反リベラルの象徴だと言われているが、これは少なからず日本の教育業界にも影響を与えそうだなと、生まれて初めてぐらいアメリカ大統領選を他人事ではなく「じぶん事」として見ている。

教育業界に立ちおこるつむじ風

欧米で立ちおこったリベラルの竜巻は日本にも吹き付け、難民問題をもっと学ばせろとか、LGBT問題を抱える生徒に丁寧に対応しろとか、そんな小さなつむじ風を教育業界にも運んできた。

だが実際のところ、この業界は業務過多であることが叫ばれて久しい。

新聞屋には「教育環境の中でこんなに恵まれない人がいるんです」と片っ端から報道された結果、人間社会の生きる困難を詰め合わせパックにしたような種々の対応に対して全方位的に適切に対応することを求められるようになり、もちろん人員は増えず、どこの現場もオーバーヒート寸前となっている。

リベラル思想が台頭する限り、この負荷が増し続けるのは明白だ。

これはまさにアメリカでトランプが大統領に選ばれた背景と同じ構図であるように思う。マイノリティー優遇の結果、想定以上に抑圧されたと感じている人が増えているのだろう。アメリカが反リベラルに動いたいま、日本の教育業界はこのあおりをどの方向に受けるのか、かなり気になるところである。

グローバル教育の行く先は

「グローバルスタディー」と称される教育改革の動きはここ2~3年で劇的に流行し、今や私立学校のホームページで「グローバル」という単語を見ない方が珍しいぐらいになってしまった。

しかしアメリカにおけるグローバル化の向かう先と、日本の教育業界が志向するグローバル化は、ちょっと違うような気もしているので、アメリカが反グローバルに舵を切ったからと言って、日本のグローバル教育が方向転換を余儀なくされるかというと、そうとも思えない。というのも日本の教育業界における「グローバル化」は、アジア地域における日本の台頭が主眼にあるような気がしているからだ。

文部科学省が推進している「SGH(スーパーグローバルハイスクール)」施策における採択校の研究プランを見ていると、アジア・オセアニア地域との連携がかなり多いように見える。

もちろん、欧米圏に行くのにはお金がかかるとか東南アジアの方がプランを立てやすい種々の事情もあると思うけれど、僕にはなんとなく国家の将来的な外交方針がふんわりと反映されているように感じる。日本をリーダーとする「大東亜共栄圏」のようなものを構築することをグローバル化の主な成果として見ているのではないか、というような。

 これはトランプの訴える「日本の自立」にもちょっと近いので、トランプが選ばれたことによりこの流れが滞ることは無いのかな、という気がする。

都内の伝統校の動きは

別件だけど、もうひとつ個人的には、都内の伝統私立校がこのグローバル教育の流れにどのタイミングでどれだけ乗って来るのかも気になっている。

どの学校も自分たちの教育の伝統とカリキュラムに自信を持っていて、流行りのグローバル教育に頼らなくても望む人材を育成できるという気概があるだろう。しかし、旧制中学の誇りだけを引きずって凋落した伝統校の前例は数知れない。

どの学年で何をやるのか、どの国を選ぶのか。私学の伝統を支えてその学校の選択をよく注視していきたいなと思っている。