こまどりロビン教育科

中学・高校の教育関係を中心に、実感と事例を挙げながら書いていきます

教材開発とでんじろう先生

理科教育における「教材開発」の重要性

みんな当たり前に習いすぎてて意外と気付いていないが、昭和の理科教育の進展は教材開発の革命史であると言っても過言ではない。

例えば「化合」の教材は昔は全然開発されてなくて、水素と酸素が化合して水になるという、中学生にはかなり分かりづらい例で説明されていたのだけれど、有名な

『鉄+硫黄→硫化鉄』

の反応が教材化されてから、格段に理解が進むようになった。分解は炭酸水素ナトリウムの熱分解で説明されるようになった。

高校生物でも、細胞分裂はタマネギの発根、生殖細胞形成はネギの花の観察と、非常に理解の助けになる教材が開発されてきたおかげで、過去とは比較にならないほど効率的な理科教育が現在では実施されている。

この教材開発は、基本的には全国の理科の先生によって行われているのだが、僕はいまいち、理科の先生の群れになじむことができないことが多い。

なんというか、話の枠組みが教育理科にとらわれ過ぎなんじゃないかと思うのだ。一般人から見ればどうでもいいことじゃない? ってところに意識を集中し過ぎなのだ。この傾向は良くない。生徒を巻き込むダイナミズムにも欠けるように思える。

たまーに、見るべき価値はあるかなという報告を見るのだが、それが謎の会合と同人誌みたいな冊子でしか発表されないので、いまいち広く伝わらない。そこも残念なポイントだ。教育研究の成果はもっとネットで公開されるべきだと僕は思っている。あの謎の冊子に載ったところで、本棚の隅にしまわれるのオチだし、だったらいっそのことネットに載せれば、日本中の人が、いつでも好きな時にアクセスできるのに、と思うのだ。

 でんじろう先生はやっぱりすごい

さて、そういう意味ではでんじろう先生は画期的だ。あの人はすごい。

物理の教育実験というのは、はっきり言って眠くてつまらないものが多いんだけど、でんじろう先生は教育実験という枠組みは一切気にしないで教材研究を行った人だ。あの人が開発した実験は、中学物理や、高校物理を理解するうえで助けになる実験かと言われると、必ずしもそうではないものも多い。一つの概念(例えば静電気とか)を、最短距離で理解させられるような実験では全然無い。それどころか流体力学なんていう高校物理とはとんと無縁な分野のものもある。

しかし、誰が見ても面白い。あの人の実験は面白い。そして人の心に、大きな足跡を残す。ただその一事が、非常に重要だったりするのだ。あの人のおかげで、つまらなく眠たいものになっていた理科教材開発に、大きく新しい風が吹き込んだと言ってもいいと思う。

僕の持っている一つの大きな夢として、自分の開発した理科教育実験・理科教育教材が日本中に広まること、というのがある。研究者の世界は向いてないなと思って進むのをやめた僕だが、いちど理科教育の世界に進んだからには、やはりそれなりには一石を投じたぞ、という気持ちでこの業界を去れるようになりたい。