ゆくへも知らぬ マスコミの教育報道
「確約システム」の報道が出たけど
最近、毎日新聞が高校の確約合格の件を躍起になって報道している。
近畿・一部私立高:塾相談会で合格確約 入試2カ月前 - 毎日新聞
私立校には確約合格という募集要項に載ってない内部合格システムがあって、これは不公平だという趣旨だ。これを見て「マスコミが裏を暴いてくれた!よくやった!」と思う人もいなくは無いのかもしれないが、特に珍しいシステムでもなく、埼玉なんかではほぼ公然のシステムで、知恵袋やnaverまとめにも普通に書いてあるぐらいだ。
埼玉県の次の私立高校で一度の個別相談で確約がもらえる内申点... - Yahoo!知恵袋
【埼玉あるある】北辰テストのひみつ【私立高校の確約】 - NAVER まとめ
生徒に公表していい/ダメ、保護者が確約相談に行く/中学校の先生が行く、などの違いはあるものの、全国に遍在しており、賛否分かれる部分はあるものの、総じて受験生にも私立校にもどちらにもプラスになるシステムといっていいだろう。
- 先生……生徒に対して「××高校はお前の実力なら合格できるから、思い切って●●高校に挑戦してみろ!」と前向きの進路指導を行える。
- 生徒……上記の進路指導により、上位校を挑戦校として受験できる。自分の実力で進路を切り開いた体験ができ、人生にプラスの気持ちを持てる。
- 私立校……一定の質を持った生徒を合格可能性がある生徒として囲い込める。
真面目に一般受験した生徒がかわいそうぢゃないか!、という声もあるのだが、ほんとうに真剣にその高校に行きたいなら、単願で受験すればいいのである。一般的には、確約をとるより単願で合格する方が簡単だ。
まあ細かく考えると些末な問題はあるのだが、そんなことより僕が思うのは、毎日新聞はこの報道をしてほんとうに教育が良くなるかとか考えてるのだろうか、ということだ。上記に書いたように、確約というシステムことは総じて全国の中学3年生にプラスをもたらしている。この報道はその現実を全くかんがみてないように思われるのだ。
いくらかの公平性を損なうシステムなのはわかる。しかしそれの代替として中学3年生の進路指導を保証するシステムを毎日新聞の記者は考えてくれるのか。また構想があるとして、それを普及・定着させるところまで責任をもって面倒を見てくれるのか。
ぼくにはどうも、正義の味方づらをして、読者の食いつきがいい報道をしているだけにしか思えないのだ。
思い出そう「世界史未履修」のこと
これは、10年ぐらい前の「世界史未履修問題」のときにも思ったことである。
文科省が「寝た子」の状態にして学校の自主・自治を尊重していた部分を掘り起し出して、全国の高校を混乱に陥れた。しかも時期は受験差し迫る10~11月である。結局全国の受験生が受験勉強の最盛期に全て中断させられて世界史のビデオを見せられるという意味不明の巻き添えを喰らうだけになり、だれひとり幸せにならず、新聞屋がお金もうけに成功しただけである。
そもそも世界史の未履修なんて、誰も不幸にもなっておらず、誰も被害者がいない問題である。報道して問題提起するなら、もっと違う時期に、もっと違うやり方があっただろうと思うのだ。
このように「このニュースのあと、教育はどうなるか」の行方を考えているとは思えないマスコミの報道のあり方にはいつも強い疑問をおぼえている。